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動物の輸血について
動物の輸血について
輸血医療とは
輸血は動物の体内を巡る血液を補充することによって行われる治療です。血液は動物の体の中を常に循環しており、体の機能を維持しています。血液は血漿という液体成分と赤血球、白血球、血小板という3種類の細胞成分で構成されています。この血液全体あるいは特定の細胞成分、血漿成分に溶け込んでいるタンパク質や血を固めるために必要な因子(凝固因子)といった成分が何らかの原因によって失われるもしくは不足すると動物に悪影響が生じます。輸血療法は献血していただいた血液を動物に投与することで血液や細胞成分を補充し、状態の改善を試みる治療です。
輸血の種類
輸血は血液全体を補充する全血輸血と血液の一部の必要な成分に限定して補充を行う成分輸血の大きく2つに分けられます。
全血輸血
最も使用される輸血法で、血液全体を補充します。
赤血球、血小板、凝固因子、タンパク質が補充され、多くの疾患に適応されます。血液成分の全部が消失する出血に対してはもとより、一部の成分が消失する疾患に対しても適応されます。
成分輸血
- 赤血球 細胞成分の一つである赤血球は体全体に酸素を輸送する働きを持っています。この赤血球の量が低下することを貧血といいます。輸血によりこの赤血球を補充する事により貧血状態の改善を図ります。
- 凝固成分 血管が破れ出血が起こると、血液の中に含まれる血小板と凝固因子がそれを塞ぎ、出血から体を守ります。それら凝固成分が不足すると、出血を止める事が出来なくなり、大量出血や貧血の原因となります。輸血により血小板や凝固因子を補充し、易出血状態を治療します。
- 血漿 血漿中には多くのタンパク質が含まれます。その1種であるアルブミンは血管内に水分を留める機能を有し、このアルブミンが低下をすると、血管内から水があふれだし、腹水や胸水、浮腫などを引き起こします。また、血漿中のタンパク質には凝固の調節をする成分が含まれ、その低下により血液凝固の調節がおかしくなり、血が固まらなくなったり、逆に血管内で血液が凝固し血液の塊が臓器に詰まってしまう事もあります。輸血により血漿を補充する事で、上記病的状態を治療します。
適応疾患
- 多量の出血が予測される外科手術
- 出血性疾患 事故、消化管内出血、腫瘍による腹腔内出血 等
- 溶血性疾患 免疫介在性溶血性貧血、バベシア感染症、マイコプラズマ感染症 等
- 血液造血異常 骨髄疾患(赤芽球癆/再生不良性貧血/骨髄線維症)、慢性腎不全 等
- 凝固異常 播種性血管内凝固、遺伝性凝固因子欠損症(血友病など)、肝不全 等
- 低蛋白疾患 蛋白喪失性腸症、肝不全、ネフローゼ症候群 等
輸血の手順
輸血の効果と副作用
輸血ネットワークについて
犬猫には、人のような献血システムが存在しません。そのため、輸血を必要とする手術や治療を行うためには、ペット同士の助け合いが必要です。輸血ネットワークとは治療や手術に輸血を必要とする動物と、血液の提供ができる動物をマッチングさせるネットワークシステムです。